連続テレビ小説「舞いあがれ!」の第13週放送分を小説調でまとめていきます。
目次
【第61話】12月26日(月)放送 浩太の入院
五島での生活を送っていた舞(福原遥)は、めぐみ(永作博美)から浩太(高橋克典)が救急車で運ばれたと連絡を受けます。浩太のことが心配で仕方ない舞は、急遽東大阪へ戻ることにしました。そして浩太の入院する病院に到着すると、浩太は「おぉ舞!こっちや!」と嬉しそうに舞を呼びます。
浩太はすっかり元気そうで、舞が「大丈夫なん?」と聞くと、浩太は「ちょっとな、疲れが出ただけや」と言います。浩太は胃潰瘍になってしまい、1週間入院するよう医者に言われたそうです。
浩太は「さっさと退院したい」と本音をこぼしますが、めぐみから「あかんよ」とたしなめられます。するとそこに、久留美(山下美月)が現れます。浩太が入院していたのは、久留美の働く病院だったのです。
浩太が運ばれた時、救急外来に久留美がいたということで、落ち着いた浩太の姿を見て久留美も安堵していました。しかし、久留美も「あんまり無理したらあきませんよ」と釘を刺します。そして、現在の状況に舞は「良かった」と心底安心した表情を見せるのでした。
その夜、舞は祥子(高畑淳子)に「浩太は元気そうだった」と伝えます。朝陽(又野暁仁)の様子を聞くと「貴司(赤楚衛二)と一緒に星を眺めている」と言います。
舞はめぐみと夕飯を食べながら、浩太が救急車で運ばれたときの様子を聞きます。浩太は胃のあたりを押さえながら急にうずくまり、顔を真っ青にして油汗まで浮いていたため、慌てて救急車を呼んだそうです。
そして、めぐみは今まで舞に隠していた工場の現状について語り出します。「リーマンショックでうちの工場、仕事が急に減って。自動車に使うネジの注文も、ばったり無くなってしもた。新しい工場建てたばかりでその借金返さなあかんのに、売上がほんま厳しい状態でな。
従業員のお給料かて、もう何ヶ月も家の貯金から出してる。せやからお父ちゃん、新しい仕事もらうために色んな会社行って頭下げて、毎日走り回ってたんやわ。」それを聞いた舞は「なんも知らんかった」と深刻そうな表情を見せますが、めぐみは「舞に心配かけたくなかったから」と言います。
更に、めぐみは嬉しそうに「悠人(横山裕)も帰ってくるって。やっぱりお父ちゃんのこと心配してる」と舞に報告します。次の日、舞とめぐみは浩太の病室へ見舞いに行きます。浩太に「調子どうか」と尋ねると「ピンピンしてるわ」と元気そうです。
そしてめぐみは、浩太から頼まれていたパソコンと「歩みノート」を渡します。この歩みノートとは、岩倉螺子製作所が株式会社IWAKURAになったときから毎日浩太が書いていた日記です。舞は「見てもええ?」と聞き、興味津々にノートを読みます。
次の日、めぐみは工場の初期メンバーである笠巻(古舘寛治)と結城(葵場)に浩太の現在の様子を報告します。仕事の件も含め3人で話していると、結城の携帯が鳴ります。しかし結城はその電話に出ることなく、笑ってごまかし「ネジ急いで仕上げます」と言いながらそそくさと去っていきます。
一方、病院で仕事をする浩太は、胃を押さえながら痛そうにします。舞はその姿を見て「あんま無理せんといてな」と声をかけます。
しかし浩太は「今が正念場やってな。飛行機の部品作れる工場にしたいとずっと思ってて、やっとその入口に立てたとこなんや。今はキツいけどな、ここを乗り越えたらグッと夢に近づけるわ。舞かて大変な訓練乗り越えてパイロットの夢に近づいたやろ?それと同じや」と話します。
それを聞いた舞は、パイロットの厳しい訓練を受けていた日々を思い出し、自身の体験と重ねます。そして「訓練は大変やったけど楽しかった。私には無理や思っても、仲間に教えてもろたり話聞いてもろたら元気になった。
しんどい思いしたから初めて1人で空飛んだ日、ほんまに嬉しかった。頑張ったんはこの為やったんやと思った」と話し、浩太も笑顔で聞きます。
そんな話をしていると、悠人が病室に現れます。浩太は「東京からわざわざ来てくれたんか」と嬉しそうにしますが、悠人は大阪で確実に成長する会社をリサーチしているところだったそうで、そのついでに寄ったと言います。
更に悠人は「リーマンショックは俺にとって絶好の稼ぎどきやった」と得意げに話します。浩太が「みんな大変な思いしてんのに、そんな言い方ない」と返しますが、悠人は「ちゃんとしているところは生き残るし、そうやないところは潰れる。そんだけの話やろ」と冷たく言い放ちます。
さすがに頭に来た浩太は「どういう意味や」と悠人に言いますが、悠人は「この仕事で見てきた現実や」と一言残し、その場を後にするのでした。
その後、舞はカフェ「ノーサイド」で悠人と会います。舞は真剣な表情で「お父ちゃんの会社、大変やねん」と前置きをすると、めぐみから聞いた工場の現状を詳しく話します。そして「お父ちゃんが会社立て直すん、助けてくれへん?」と悠人にお願いします。
しかし悠人は「なんで?」と全く同情する様子もなく、舞は呆れた表情を浮かべます。翌日、浩太は無事退院できることになり、舞とめぐみも「良かったね」と喜ぶのでした。明日退院し仕事に復帰する浩太は、会社を立て直すことができるのでしょうか。
【第62話】12月27日(火)放送 復帰する浩太
浩太(高橋克典)は無事退院し、会社の朝礼で社員たちに「心配かけてすみませんでした。みんなお見舞いもありがとう。知っての通り、今工場は厳しい状況にあります。けど、なんとかして乗り越えたい、どうかみんなの力を貸してください」と挨拶をしました。
そしていつも通り元気にラジオ体操をし、職場の自席に戻ります。そこに経理の古川(中村靖日)が話があると言いに来ます。浩太と古川は別室に行くと、古川は「何度も言ってますが、人員の整理をお願いします」と浩太に催促するのです。
浩太は「それだけは避けたい」と反対しますが、古川は「もう限界です。借金の返済期限が迫ってます。返済を待ってもらうためには、本気で再建する計画を銀行に示さないと」と訴えます。浩太は「リストラしかあれへんのか…」と困惑するのでした。
そして、まずは商品梱包のパートとして雇っている女性3人だと提案されます。浩太は自宅に帰ると、パート社員の履歴書を眺めながらため息をつきます。それを見ためぐみは「やめてもらうのは辛いけど、仕方がない。3人の分は私が埋める」と声をかけます。
すると舞(福原遥)が「それ私にもできる?」と2人の話に入ります。しかし、めぐみと浩太は「舞はパイロットの勉強に集中しなさい」と反対します。それでも舞は「2人が困ってるのを黙ってみているのは嫌だ。商品梱包の仕事を手伝わせて欲しい」と引きません。
それから一週間後、舞は工場の見学に訪れ、そのまま商品梱包の仕事を見せてもらうことになりました。ここでは、工場で出来上がったネジから不良品をはじき、重量を計って梱包するという仕事を3人のパート女性が手分けをして行っています。
一通り仕事を見せると、パートの1人が「ほな、やってみる?」と舞に作業用のグローブを渡します。舞は見たように梱包まで実践してみます。
すると、舞の詰めたネジを箱から一気に出して1本のネジを取ると「ここ傷あんなぁ。ちっちゃい傷やけど、機械の選別では見つけられへんかった傷や。これを見逃せへんことがIWAKURAの品質を守ってんねん」と教えます。
舞は真剣な表情で「はい、すみません」と素直に謝りますが、パートの女性たちから「こないなお嬢ちゃんに、うちらの後釜が務まんのやろか?」「素人でもできる仕事だと思われてるから真っ先に切られんねやろ」「うちらが、どないな思いで働いて来たかも知らんと」と嫌味を言われてしまいます。
その後、舞は久留美と会うために、カフェ「ノーサイド」に訪れます。そこには久留美(山下美月)の父・佳晴(松尾諭)がカウンター席に座っていました。舞は隣に座って「しばらく父の工場で働くことになった」と報告すると、佳晴は「俺も雇ってもらわれへんやろか」と聞きます。
舞は気まずそうな表情を見せながら「私もお給料出えへんのです」と申し訳無さそうに答えると、佳晴は恥ずかしくなったのか「冗談やで」と笑って流します。そして「今は1回職を失うと働きたくても働けない」と愚痴をこぼします。
翌日、浩太は銀行で「パートさん3名に退職してもらうことにした」と話します。しかし銀行側からは「その程度でどうにかなる状況ではない」と言われてしまいます。
厳しい表情を浮かべる浩太ですが、更に「売上の増加ができなければ、人員削減だけでなく機械を売ったりするなど、抜本的な改善策を出してもらわないと、これ以上返済の猶予は出来かねる」と追い打ちをかけられるのでした。
その夜、浩太は笠巻(古舘寛治)と「うめづ」で食事をしながら、銀行で言われたことを話します。そして「機械売るっちゅうことは夢を売るっちゅうことやろ」と本音をこぼすと、笠巻は「売ったらええがな」と予想外な返答をします。
笠巻が続けて「あんたが工場継いだ時、あんな立派な機械なかったやんか。亡くなった親父さんと違って経営も下手くそでな。愛想尽かした従業員が1人減り2人減り…結局小さい工場で俺と2人で働いてたやんか」と昔の話をすると、浩太も思い出して笑い合います。
そして「俺はあの頃も悪くなかったと思うで。機械は売っても構へん。あの小さい工場にもでっかい夢はあったんやから」と浩太に話します。
その後、会社ではパートの職員3人が退職する日がやって来ました。浩太は「こんなことになって、ほんま申し訳ありません」と深々と頭を下げます。
すると、先日ネジの仕分けについて指導してくれたパート女性が、舞に「お嬢ちゃん、これだけは覚えておき。商品梱包の仕事は最後の砦や。私らが不良品1個、ホコリ1個でも見逃したら、そのままお客さんのとこへ届いてしまう。
ここのネジは、ええネジなんや。職人さんらが心こもって作っててな。そのネジをたった1個の不良品のせいで台無しにはできへん。そう思ってこれまで気張って働いてきたんや」と梱包という仕事の大切さを教えます。
そして、浩太にも「社長、頼むで。この工場、潰さんといてな」と言い残します。浩太は「必ず立て直します。そん時はまた、お願いします」と伝え、3人を見送ります。最後まで深く頭を下げる浩太の目には、悔しさの涙が浮かびます。
【第63話】12月28日(水)放送 経営会議
舞(福原遥)が工場を手伝い始めて1ヶ月が経とうとしていました。舞は辞めていったパートの女性に教えてもらった「商品梱包の仕事は最後の砦」の言葉を胸に刻み、必死にネジの不良品が無いかチェックします。
普段しない体制を保ち仕事をする舞は、肩が凝った素振りを食堂で取っていると、後ろから「そんなに疲れますか?」と女性社員が話しかけてきました。舞が普通に「力が入っていたみたいで」と返すと、その女性社員は「頑張った~っちゅうアピールかと思いましたわ」と嫌味を言い、立ち去っていくのです。
株式会社IWAKURAの社員の中には、社長の娘の舞のことを良く思っていない社員もいました。風当りが強い社員の中でも、舞は浩太(高橋克典)やめぐみ(永作博美)、株式会社IWAKURAのために懸命に働いているのです。
営業周りが終わり会社に戻った浩太は社員全員を集め、会社を少しでも立て直すためのコスト削減の案を話し合う会議を始めました。経理総務課 課長の古川(中村靖日)が輸入材料に頼る案を出すと、現場の職人たちは品質が落ちることや不良品が出ることを懸念し、猛反対します。
コスト削減をするには、どうしても生産者にとって厳しい条件になってしまうため、話合いはヒートアップしてしまい、重苦しい空気が漂いました。そんな中、古株の結城(葵楊)はだんまりを決め込み、他の何かに悩んでいる様子です。仕事が終わると笠巻(古舘寛治)と結城はお好み焼き屋うめづに集まっていました。
笠巻は最近の結城の異変に気付いており、「何悩んでるんや」と尋ねます。笠巻には隠し通せないと悟った結城は、「他の工場から引き抜きの話がある」とおもむろに話始めました。給料は今の倍出してくれると言う引き抜きの話に、3人目の子供が生まれる結城は心が揺らいでいたのです。
笠巻はその話を聞き、「お前は3人目の子供も生まれて背負うものが大きい、お前はもう一人前や。どこ行ってもやっていける立派な職人や」と結城がどの決断をしても応援すると背中を押しました。翌日、休憩時間を迎えた舞は唯一空いている結城たちの席に座ると、出産の予定日はいつなのか話しかけます。
結城家の3人目の子供は、初めての女の子のようで、それを聞いた社員たちからは「子供のお古をあげる」「よだれ掛けくらいなら縫える」など優しい言葉が飛び交いました。温かい仲間たちに感謝しながらも、結城は引き抜きの話を思い返し厳しい顔を浮かべます。
仕事に戻った舞は、本日初の不良品を発見しました。不良品が出たことを工場に伝えに行こうとする途中、食堂で背中を丸める浩太の姿を発見します。
連日のハードワークで浩太の体調が悪化し始めていることを懸念した舞は、お腹に優しい雑炊を作りました。夜遅くまで会社に残る浩太にお雑炊を出すと、二人で会社のことを話ながら食べ始めます。
舞は今日見つけたネジの中で不良品を見つけたことを報告すると、「お父ちゃん凄いな。私な今日見ただけで1万本以上のネジを見て来たねん。その中で不良品はこの1本だけやった。お父ちゃん、ええネジ作ってんやな」と浩太には嬉しすぎる言葉をかけました。
会社の経営が厳しい中、舞からネジを褒めらた浩太はとても嬉しそうで、「舞のいい所は、人のええ所を見つけられるとこや」と返します。
すると、舞は「パイロットはリレーのアンカーやねん。機体を作る人、空港で働く人、機内で働く人、大勢の力が合わさって初めて飛行機は空を飛ぶ。私、お父ちゃんパイロットみたいやなって思うねん。工場のみんな乗せてるから、絶対に飛び続けなあかん。そう思って頑張ってるパイロット」と伝えます。
舞の言葉が胸に沁みる浩太は優しい表情を浮かべ頷きました。「責任が重くて大変やけど、仲間がおるから頑張れるんやろ?」の舞の言葉に「乗り越えるためには、なんでもやるで!」と気合を見せます。舞も「私も手伝う」と返すと、浩太は頼れる娘に感謝するのでした。
翌日、社員たちが食堂で昼食を取っていると、営業から帰ってきた浩太が大騒ぎして帰ってきます。なんと太陽光発電のソーラーパネルの新規の仕事が入り、納期は厳しいものの成功すると今後大口の取引になるようなのです。久しぶりの新規の仕事に社員たちは一緒になって喜ぶと、気合を入れます。
浩太はさっそく結城に成形の相談を始めると意気込むと、笠巻は二人の様子を心配そうに眺めました。ようやく光が見えてきたIWAKURAでしたが、外には黒塗りの高級車が到着します。なんと車から降りた人物は悠人(横山裕)で、「この工場、なんぼになるやろか」と不穏な言葉をつぶやくのでした。
【第64話】1月4日(水)放送 IWAKURAを訪ねる悠人
2009年、株式会社IWAKURAはリーマンショックの影響で経営危機に陥っていました。そこで工場嫌いの悠人(横山裕)は浩太たちを心配し、珍しくIWAKURAにやってきたのです。久しぶりにIWAKURAに尋ねた悠人は工場の作業服に身を包んだ舞(福原遥)を見て驚きます。
「なんやその恰好」と聞く悠人に舞は「工場手伝ってんねん。商品の梱包してる」と説明しました。舞が嬉しそうに「お兄ちゃん来てくれたんやな」と言うと、悠人はお決まりの「仕事で近くまで来たから、ついでや」と素直に顔を見に来たとは言いません。
本心をお見通しの舞は笑顔で悠人の話を聞きながら、工場の案内を始めます。舞は広くなった工場を自慢げに説明しますが、悠人は工場の機械音が気に食わないらしく「相変わらずうるさいな」と文句を吐きました。奥に進んでいくと、笠巻(古舘寛治)と結城(葵楊)に出会います。
久しぶりの悠人に笠巻と結城は再開を喜びながら「どや親父さんが作った工場。立派なもんやろ」と尋ねました。しかし、悠人は工場の感想は言わず目の前の機械を見て「この機械なんぼですか」と返します。
笠巻が「1,500万や。これが5台ある」と答えると、悠人は何やら吟味するように機械を見渡し、舞が浩太たちのところに誘うも、うめづに行くと工場を立ち去ったのです。親に合わず工場を立ち去る悠人の姿を見た笠巻と結城は、「何しに来たんやろ」と疑問を抱くのでした。
その日の晩、さすがに悠人は岩倉家に顔を出し、久しぶりに家族全員で食卓を囲みます。浩太も悠人と晩御飯が食べられるのが嬉しそうようで、医者から止められているビールに手を伸ばしますが、めぐみ(永作博美)に厳しく止められました。
浩太は自分が飲めない分、悠人にビールを注ぐと「お前は飲め、工場に新しい仕事が来たお祝いや」何気なく呟きます。その言葉に悠人は微妙な顔をしながらもビールを飲むと、舞がお手製の丼ものを出しました。舞の手作りに驚きながらも丼をかけこんだ悠人は「うまいな」とさらに驚きます。
悠人のリアクションに家族全員が笑い、穏やかな時間が岩倉家に流れました。めぐみはもっと頻繁に家に顔を出すよう促しますが、悠人は相変わらず「仕事で寄っているだけ。会食で実家に帰る時間がない」の一点張りです。そんな中、ふと机の上を見ると、以前自身が送った謎の宇宙人の置物があることに気づきます。
めぐみは「なんやいつも見ていたら、可愛らしく思ってな」と置物の話をすると、優斗は「売ったらええのに。今プレミアついて、俺が買うた時の10倍以上の値段するで」と返しました。10倍?と驚く一堂に悠人はついに本題に入ります。
「瘦せ我慢せんと売ったらええのに、工場も」と突然の厳しい発言に、場の空気は凍り付きました。さらに悠人は「まだ新しいし、機械も綺麗や。今やったら買い手もつくやろうし」と続けると、浩太は険しい表情に一変します。
借金のことを舞から聞いている悠人は、今まで見て来た倒産した会社のようになってほしくないため、早めの売却を浩太に勧めているのです。「親父。傷が浅いうちに工場売ったらええやん」と言う悠人に、浩太はこれまでの歩みや社員のことを知らないお前が簡単に売るって言葉を出すなと反論します。
「金には変えられへんのじゃ」と声を荒げる浩太に、悠人は「わからん親父やな。なんでみんな損切りできへんか教えたろか。自分の失敗認めるのが怖いからや。結局親父は現実見る勇気ないねん。」と厳しい言葉を放ちました。
これまでの浩太の姿を見ていない悠人は客観的に冷静な判断をしているのですが、身体を壊しながらも懸命にリーマンショックに抗おうとする浩太にはあまりにも悲痛な言葉です。ついに感情が抑えきれなくなった浩太は「帰れ」と言葉をかけると、悠人は「言われなくれも帰るわ」と岩倉家を飛び出ていったのです。
めぐみも、悠人が家のことを心配して訪ねてきていることを理解していますが、言い方がきつすぎるとこぼします。そんなめぐみに舞は、「お父ちゃんも傷ついてるやろうけど、お兄ちゃんも傷ついてるんやないか」と悠人の心配をするのでした。
翌日、舞はノーサイドに悠人を呼び出します。着いて早々「何べんも呼び出すなや。俺忙しいねん」と悪態をつく悠人に舞は謝りながらも「心配したから帰って来たんやろ。力になりたいって伝わるように言ったらええやん」と助言しました。
そんな話なら帰ると言って悠人は立ち上がりますが、舞は必死に引き止めます。なんとか悠人を席に戻し「一緒に考えて欲しいねん。工場を立て直す方法」と本題に入った舞ですが、あっけなく断られてしまいました。
悠人の考えは一貫しており、浩太が今一番しなければいけないことは被害を最小限に抑えることで、工場をすぐに売ることだと言い張ります。舞も浩太の夢や工場にかける姿を知っているので、簡単に工場を売ることはできるはずがないと譲りません。
しかし、舞の必死の説得も虚しく、悠人は「甘いな。親父がどれだけ工場を大事にしてようが関係ない。利益が出せへん工場は潰れるしかない。」と冷たく言い放ちます。温厚な舞もこの言葉には感情的になり、なんでそんな他人事みたいに冷たんだと言い返しました。
しかし、悠人は「お前も他人事やろ。今やってることも自己満足やろ。来年にはパイロットなって家出てくんやろ。その後工場がどうなるのか考えたことあるんか。お前がやってることはその場しのぎの新設やねん。どうせ手放すなら、端から助けん方がええ。無責任やぞ」と厳しい客観論を突き付けたのです。
何も言い返せなかった舞は悠人が帰った後も、アイスがどろどろに溶けるまで動けずにいます。そこに久留美がやってくると、柏木に電話するように促すのでした。
【第65話】1月5日(木)放送
久留美(山下美月)から、遠距離恋愛は頻繁に連絡を取ることが大切だと言われた舞(福原遥)は、帰宅すると早速柏木(目黒蓮)に電話をします。柏木は「もしもし、舞?」とすぐに電話に応答しました。
久しぶりの電話でお互いに「元気?」と聞き合う2人でしたが、舞の様子が少々おかしいことに気付いた柏木は「何かあったのか?」と尋ねます。舞が「うちの工場が大変で、しばらく手伝うことにした」と伝えると、柏木は「パイロットにはなるんだよな?」と聞き返します。
舞は柏木の質問にハッとしますが、なんとか「来年にはなるよ」と返答します。柏木は「勘が鈍らないように勉強しておけよ」と舞に伝え、舞が「忙しいのにごめんな」と言うと「じゃあ、また」とあっさり電話を終わらせてしまうのでした。
一方、IWAKURAでは経理の古川(中村靖日)が浩太(高橋克典)のところにやってきて「社長、今回の仕事が上手く行ってもそれで全てが解決するわけやありません」と言います。
浩太は「わかってるけど、重要な一歩やで。太陽光発電の仕事が決まったら、売上も徐々に回復していくはずや」と答えますが、古川は「けど、間に合いません。今人員整理進めな工場が持ちません」と催促します。
浩太は変わらず「それだけは出来ない。これ以上従業員は切られへん」と断固拒否です。そこにめぐみ(永作博美)が現れたため、浩太は去っていきます。めぐみが古川に「なんかあったん?」と尋ねると、古川は浩太にリストラを提案したことを伝えます。
そして「今リストラしないとIWAKURAは終わってしまいます。奥さんからも説得してもらえませんか」と、めぐみに強く訴えるのでした。それをたまたま聞いてしまった1人の女性社員が昼休憩に舞の隣に座ると、舞に「お嬢さんが辞めるのが先か、私が辞めさせられるのが先か」と嫌味を言います。
帰宅した舞は、浩太に「また誰か辞めんの?」と聞きます。浩太が「誰も辞めへんで」と答えると、めぐみが「工場潰れてしまったら、従業員全員が仕事無くすねんで。それやったらリストラのほうがまだましなんと違うかな」と浩太を説得しようとします。
すると浩太は「お父ちゃんな、機械は売っても仕方ないと思ってるわ。やけど、一緒に働いてきた仲間をクビにはでけへん。それだけはあかんねん。まだ何か手はあるはずや、諦めたない!」と自身の考えを舞とめぐみに伝えます。
浩太の発言に、めぐみは笑顔で頷き納得します。そこで突然、浩太が胃のあたりを抑えながら苦しそうにします。痛みで前かがみになってしまう浩太に、舞が「お父ちゃん、大丈夫?」と声をかけますが、浩太は「大丈夫や、薬飲めば治る」と強がります。
めぐみが「明日病院行ってきてな」と言うと、浩太は「そんな時間あらへん。今は大事な時や」と薬を飲んでなんとか誤魔化そうとするのでした。
翌日、太陽光発電機に使用するネジの試作品開発が思うように行かず悩んでいた工場では、結城(葵揚)の名案によりやっとネジが出来上がり、浩太が「よくやった」と結城を褒め称えます。
5月になると試作品が合格したという連絡を受け、浩太や工場の社員たちは喜びあいます。しかし、その日仕事が終わると結城は浩太を呼び出し、退職願を提出します。
結城は、他の会社から引き抜かれたことを浩太に報告し「社長には18の頃からお世話になって、こんな形で辞めるのは申し訳ないと思ってます。せやけど、3人育てんのはお金がかかって」と本心を伝えます。浩太は、結城の選択に「もう決めたことなんやな」と寂しそうな表情を見せつつも、納得している様子です。
結城は「恩を仇で返してしもて」と言いますが、浩太は「それはちゃうわ。ちゃらちゃらしてたお前がどんどん腕を上げていくのを見てるのは楽しかった。もう十分、恩は返してもろた。他所に引き抜かれるのは悔しいけど、それだけの腕前になったっちゅうことや。誇らしいで」と言い、退職願を受け入れます。
その晩、浩太と笠巻(古舘寛治)はいつものように「うめづ」で食事をしながら、結城の件について話します。浩太は「会社立て直すから行くなと言えないのはほんまに悔しい」と本音をこぼしますが、雪乃(くわばたりえ)や勝(山口智充)らは「あんま思い詰めたらあかん」と浩太をなだめます。
そして、結城の退職する日がやってきました。結城は「大事なときに抜けてしもて申し訳ありません」と言いますが、浩太は「お前の腕も必要やけど、1番こたえるのは、もう一緒に働けないということや。お前がいなくなったら寂しい。今までありがとう」と声をかけます。
結城は涙を流しながら深々と頭を下げ、工場を後にします。浩太やめぐみ、舞、笠巻は去っていく結城の背中を見つめながら切ない表情を浮かべるのでした。
【第66話】1月6日(金)放送
IWAKURAでは緊急会議が開かれ、浩太(高橋克典)は試作で合格したネジの発注が100万本以上になる見込みだということを伝えます。更に納期は2週間。IWAKURAで1日に作れるネジはせいぜい5万本ほどなので、今すぐにでも作業を始めなければ間に合わないという話になります。
しかし問題なのは、本注文がまだ来ていないということです。本注文を受ける前から作り始めるのも、注文が来てから作り始めるのも、どちらにもリスクがあるため浩太はどちらにするか決断を迫られます。
浩太は非常に悩んだ挙げ句「作り始めよう」と答えを出します。工場の社員たちも「よし、早速始めよう」とそそくさと仕事に戻っていきました。
工場でどんどんネジを生産していく裏では、舞(福原遥)が1人で検品作業に追われていました。集中して作業を行う舞に、めぐみ(永作博美)が「スピードアップしたなぁ」と声をかけます。そして、ネジの検品が更に早くできる方法を教えます。
めぐみは、工場がまだ小さかった頃ずっと1人で検品から梱包作業まで行っていました。めぐみは昔のことを思い出しながら「いっぺん、ここで寝てしまったことがあってな、夜更けに目を覚ましたら傍にお父ちゃんがいた」と笑いながら話します。
その時、浩太はめぐみを心配して探しに来たようで「苦労かけて堪忍な。いつか工場大きして人増やして、めぐみのこと楽にするからな」と声をかけてくれたそうです。
めぐみは当時のことを振り返りつつ「大きい工場なんて夢みたいな話やと思ってたけど、お父ちゃん、叶えてん」と舞に語るのでした。
その晩、浩太がいつものように日記を付けている横で、めぐみはパソコンで仕事をしていました。そんなめぐみの姿を見た浩太は「いつまで経っても楽にしたられへんなぁ」とつぶやきます。めぐみが「楽やないけど、楽しいで」と笑顔で返すと、浩太は安堵した表情を浮かべました。
翌日、浩太のもとに「設計が変わったため、ネジの本注文は無しにして下さい」という連絡が入ります。焦った浩太は、発注先の会社に直接出向き「なんとかならないか」と懇願します。しかし「設計が変わってしまった以上、ネジも変えることになる」と言われるだけです。
浩太は「本発注に向けて、もう量産してるんです」と訴えますが「それは、うちがお願いしたことではありませんから」と言われ、浩太は何も言い返すことができません。こんなに大量な在庫を抱えてしまうとIWAKURAは更に追い込まれることになり、浩太はいよいよ境地に立たされます。
その日の夜、浩太は工場で機械を見つめながら考え込みます。するとそこに舞がやってきて「お父ちゃん、大丈夫?」と声をかけます。
浩太は「今はちょっと、大丈夫やないな。今までで一番しんどいわ。けど、ここを無くすわけには行かへん。ここはおじいちゃんの代からIWAKURAで働いてきた全員で作り上げた工場なんや。今までに何億ものネジを作ってきて、どんなネジ作ったかも全部記録してある」と舞に話します。
舞は「すごいなぁ」と言いながら浩太の話に耳を傾けます。浩太は「レシピがあっても材料とか道具とか作れる料理人がおらな、料理はでけへんやろ。でもここには全部揃ってる。ええレシピも機械も職人もな。ここには全部詰まってる。従業員らと力合わせて進んできたこれまでの思い出も。これらからの夢もや」と語ります。
浩太の話を聞いた舞は、強い感銘を受け「私も手伝いたい、もっとお母ちゃんみたいに工場を支えたい」と訴えかけます。
すると浩太は「お父ちゃんはな、舞が自分の夢に向かって頑張ってるのが嬉しいねんで。悠人(横山裕)もいつかほんまの自分の夢見つけてくれるって信じてる。舞はパイロット目指して頑張ったらええねん」と舞の夢を応援します。
その後、岩倉家では舞が眠れず夜遅くにリビングへ行くと、めぐみが「工場に電話してもお父ちゃんが出ない」と言います。心配しためぐみと舞は、浩太を探しに工場へ向かうことにしました。2人が会社の事務所に到着すると、浩太が倒れているのを発見します。声をかけても反応はありません。
浩太はすぐに病院へ搬送され、緊急手術を受けます。手術が終わり医師が出てくると「バイパスの手術をしましたが、心臓の動きが戻ってきませんでした。手は尽くしましたが、大きな発作でお助けできませんでした」とめぐみと舞に伝えます。
めぐみは突然の出来事に「嘘やん」と信じたくない気持ちと戦いながら、泣き崩れます。舞も現実を受け入れることができない様子で、何も言えずただ涙が溢れます。そこに久留美(山下美月)が姿を現しますが、声をかけられず切ない表情で2人の姿を見つめることしかできませんでした。